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Case 30

■ お肉の検印による変色異物

加熱しても赤い肉

こんにちは。異物検査員です。

今日はお肉の変色事例についてご紹介します。

肉の赤変事例←お肉の一部が赤色に変色したもの。 ちなみにお肉は加熱後です。

お肉の変色にはいくつかの原因があるのですが、
上の写真のようにお肉の一部が変色している場合、
しかも 加熱してもその部分だけ変わらない場合 は、
前回お話したような 「検印」 や 「等級印」 が疑われます。

(「検印」 と 「等級印」 については前の記事を読んでみてくださいね。)

検印や等級印は、食品用の合成着色料が用いられていますから、
合成着色料の分析を行うことになります。
合成着色料の分析には、「薄層クロマトグラフィー」 や 「高速液体クロマトグラフィー」 を用いて行います。



クロマトグラフィーとは何ぞや?
クロマトグラフィーの語源は、ギリシャ語の色 (chrōma クロマ) を分けるという意味らしいです。
最初に植物色素の成分を分離するための方法として確立されたからなんでしょうね。

中学生くらいの時、理科の時間に
何かのインク を チョークや紙に吸わせると、時間が経つにつれていくつかの色の成分に分けられた
という実験をされた方もいらっしゃると思うのですが、これがクロマトグラフィーの基本です。

今は技術力が向上して、色だけじゃなく、いろんな物質の分離・精製に用いられています。
例えば、
  ・ ろ紙クロマトグラフィー
  ・ 薄層クロマトグラフィー
  ・ 液体クロマトグラフィー
  ・ ガスクロマトグラフィー
  ・ アフィニティークロマトグラフィー
  ・ ゲルろ過クロマトグラフィー
などなど。
クロマトグラフィー と名が付く手法には、ここに挙げてないものもたくさんあります。

それぞれの手法によって原理はさまざま。
物質の大きさで分離させたり、電荷をもつ・持たないで分離させたり、疎水性の度合いで分離させたり。 
まー色々とあるわけですが、目的は 「分離させること」 「精製させること」 のこの2点が主です。

今回のような、合成着色料が入っているかもしれない異物の場合に有効なのは、
薄層クロマトグラフィー と 高速液体クロマトグラフィー (古典的ではあるけど、ろ紙クロマトグラフィーも含まれるかな) なので 、そのどちらかの方法を使って色の成分を調べます。



クロマトグラフィーとか言う方法を使えば、すべての色がわかるの?
そうなんですよねー。 そこが問題です。

すべての色成分が分かれば本当に助かるんですが、着色成分には色んなものがあって、
一筋縄ではいかないことが多いんです。
1つの分析手法でわかるものって限られてるんですよね。

食品に用いられるのは合成着色料と天然着色料が多いですけれど、
それ以外にも異物として混入する可能性のある色は山ほどあります
絵の具だって油絵の具と水性絵の具があるしアクリル絵の具ってのもあるし、
マジックも油性マジック、水性マジック、蛍光ペンと色々あるし、ボールペンだってそうだし、
塗料に用いられている着色成分やプラスチックに混ぜてある着色成分もあるし、
有機成分で出来た色素もあれば無機成分で出来た色素もあるし。
・・・分離するのがとっても難しいものばかり。
着色成分を調べる時に、1つの分析手法 (クロマトグラフィー) だけでは限界があるんです。

じゃぁ、他の方法も使って調べればいいじゃん! ・・・と普通はこうなるわけですが、
量がたくさんあって純粋な成分だったら他の手法を試してみる価値もあると思うんですけど、
顔料成分は少ない量でキレイに発色するように作られているので、
見た目が鮮やかでも、着色成分は少ないことがほとんどなんです。
その上、食品などに混入している異物は基本的に量が少なくて、
食品の成分まみれになっちゃってますから、
余計な分離作業が必要になって、量が足りなくなってしまうんです。



上の写真のようなお肉の変色については、
「この場合に最も疑われるのは検印や等級印だから、合成着色料の分析をやりましょう」
とオススメするんですが、合成着色料の検査をするために異物の大部分を使ってしまうから、
万が一異物が合成着色料じゃなかった場合、他の分析をしたくてもできなくなっちゃってるんです。
だから、原因が分からない場合が多くなるんですよ~ (>_<)

消費者の方や分析を依頼されたお客様は辛いですよね・・・。 原因が分からないなんてありえない!
でも、異物検査員たちにとっても原因が分からない結果を出すのは、とっても辛いことなんです。

ホント、着色の原因調査は難しいんですよねー・・・。









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